平成22年度から平成23年度にかけて,割合概念について,子どもの思考を基にしたカリキュラム構成による教授介入の実験を行った。そこでは,(1)子どものもつインフォ-マルな知識をカリキュラムに組み込む,(2)新しい概念を学習する際の認知的障害を考慮するという,視点を取り入れた教授介入を行った。その結果,概念的理解の問題において実験群は統制群より高い正答率を示した。このことより,新しいカリキュラム構成による教授介入は割合の概念的理解を深化させることが明らかになった。 平成24年度は,新しいカリキュラム構成による教授介入について,これまでの量的分析ではなく,授業における教師と子どもの発話過程の分析といった質的な分析を行った。その発話過程の分析から,量としての割合の大きさをおおまかにつかんだり,直感的に量としての大きさを予測したり,といった割合の大きさの見積もりの活動を盛んに行っていることがみられた。また,部分と全体の関係において,部分と全体の関係についての見積もりが,割合のモデルの図を用いてさかんに行われていることが確認された。こうした発話過程の分析から,実験群では量概念としての割合の見積もり活動を積極的に行っていることが明らかになった。 また,統制群の割合概念の問題分析において,認知的障害に関する極めて興味深いデ-タが浮かび上がった。それは,割合を考える際には,全ての全体は等しいという等全体の理解が基本であるが,等全体の理解問題の正答率は21%という極めて低い正答率であり,等全体については全くといっていいほど獲得されていないことが見いだされた。
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