研究概要 |
空間的視点取得能力の生涯発達過程を解明するために、3歳児から87歳の高齢者までの計477名(うち349名分は平成22年度中のデータ,平成23年度は幼児から青年までと中年期の成人を主な対象とした)に協力いただき、独自に開発した空間的視点取得課題を実施した。今回考案した計算式で算出した反応時間と正答数の2種を指標として分析を行ったところ、世代によって異なる能力特性が明らかになった。年齢群を要因とするWelchの分散分析を行ったところ、反応時間差と正答数とも1%水準で有意であった。反応時間差と正答数の生涯発達曲線は、いずれも幼児期から児童期にかけて急速に能力が上昇した後に、中年期以降に再び下降した。これらの曲線を回帰する数式を求めたところ、以下のように、それぞれ1%水準で有意な四次方程式が得られた。 反応時間差:y=-291.9x+9.97x^2-136x^3+.0007x^4+3547 正答数:y=.5253x-.0186x^2+.0003x^3-1.332E-06x^4+4.055 また、Sceheffe法による年齢群間の多重比較では有意な違いがなかったが、すでに明らかになっていたカットオフ値に対する上下群の人数に関して、年齢群の割合の違いをカイ二乗検定したところ、反応時間差ならびに正答数とも1%水準で有意差が示された。 このように、健常ならば中高齢期の能力低下は穏やかであり、一方幼児には急速な能力向上が見られること、その結果として両年齢群に同程度の低い能力が示されたとしても、詳細に見ると異なる特徴が存在することを示唆する画期的な成果を得た。 こうした研究成果を国際学会(ECDP,平成23年8月)で発表するとともに、平成24年度中に開かれる国内外の学会で発表する準備を行った。さらに、国際学会誌への投稿準備を進めた。
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