空間的視点取得能力の生涯発達過程を解明することが、本研究の目的であった。隠れん坊を模したビデオゲームを新たに作成し、これを用いて研究期間の4年間で幼児から高齢者まで合計840名ほどからデータを収集してきた。得られた資料に対して、各年齢群の能力特性の比較を中心に分析を行った。 その結果、幼児期から青年期までについては、①仮想的身体移動に関わる能力が思春期以降に発達すること、②それ以外の認知的情報処理に関わる能力は児童期後期から思春期頃に大きく伸張することが示された。また、児童期から高齢期までについては、①全般的な能力は児童期から青年期にかけて伸張すること、②仮想的身体移動に関わる能力は青年期以降の変化が小さいこと、③仮想的身体移動に関わる能力は成人期における緩やかな低下の後に、75歳以降に急激に衰えることを見出した。こうした結果を、学会でポスター発表を行ったり、国内外の学術雑誌に掲載することで広く公表した。 さらに上記の知見をもとに、空間的視点取得の脳内機序について発達的な観点から考察した。その結果、①空間的視点取得は側頭頭頂接合部と前頭前野の活性化によって生じ、②このうち側頭頭頂接合部は身体表象や自己意識を生じる場であること、また③前頭前野は側頭頭頂接合部を制御して空間的視点取得課題の特徴に応じた対応を行うこと、さらに④空間的視点取得は運動模倣を促すような条件下で、運動前野と補足運動野の活性化を伴うことを導き出した。これらの内容をとりまとめて、評論として学術雑誌に発表した。
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