研究課題/領域番号 |
22530702
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
村瀬 俊樹 島根大学, 法文学部, 教授 (70210036)
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研究分担者 |
小林 哲生 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, 協創情報研究部, 研究主任 (30418545)
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キーワード | 語彙獲得 / 入力言語 / 育児語 / ラベル / 絵本場面 / 1歳児 |
研究概要 |
京阪奈地方の14,20,27ヶ月児の母親54名について、1つの対象に複数のラベルを提供しているのかどうか検討した。その結果、子どもの月齢による差はなく、平均して14%の対象に複数のラベルを提供していた。また、育児語と成人語どちらをも使って1つの対象にラベルを提供している割合にも月齢差はなく、8.5%~14.6%の割合であった。複数のラベルを提供しているときにラベル間の橋渡しの発話を行っていることはほとんどなかった。これらの結果は、松江地方の20-21ヶ月児の母親30名を対象とした結果とほぼ同じものであった。以上のことから、日本の母親は、育児語と成人語を用いて複数ラベルの提供を行ってはいるが、育児語は、サウンドエフェクトなど、他の機能を持つ発話としても使われることが多いことが明らかとなった。この結果を踏まえて、育児語と成人語が、それぞれどのような形態素とともに用いられているのか明らかにするために、それぞれの語の後につく形態素をリストアップした。 育児語と成人語の音韻形態を持つ2種類の新奇ラベルを1つの新奇対象に与えた時、子どもは2種類のラベルとも同一の対象にマッピングするのかどうか検討した。12,16,19ヶ月児80名を対象に、スイッチデザインによるハビチュエーション法で検討した。その結果、テスト試行では、12ヶ月児は育児語も成人語もswitch条件がsame条件よりも注視時間が多いということはなかった。19ヶ月児は育児語も成人語もswitch条件の方がsame条件よりも注視時間が長かった。16ヶ月児は育児語についてのみ、switch条件がsame条件よりも注視時間が長かった。これらの結果は、日本語獲得児は、19ヶ月までに2種類のラベルを1つの対象にマッピングするのが可能になることを意味する。また、16ヶ月児が育児語についてだけマッピングすることも注目するべき結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
入力言語として、日本の母親がどの程度複数ラベルを提供し、提供している場合、互いを関連付けて提供しているのか、並列的に提供しているのかを明らかにした。また、育児語と成人語という形で複数のラベルが与えられた時、対象とのマッピングをどのように行うかについて、1歳代での発達過程を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
入力言語については、育児語と成人語がどのような形態・統語情報とともに提供されるのか、どのような機能を持つ発話として提供されるのかを明らかにする。 複数のラベルが与えられた時の対象とのマッピングについては、統制的な条件との比較を行う。また、disambiguation effectの検討を行い、日本語獲得児が新奇ラベルの処理のメカニズムを明らかにする。さらに、working memoryと産出語彙の関係について検討する。
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