研究概要 |
本研究の目的は,「英語音声の個々の音韻を認識することに優れているが,音声全体の反復が苦手である」という日本人幼児・児童の音韻処理のメカニズムを,日本語の語彙知識および音韻認識の発達との関係から解明することである。本年度は,日本人幼児における日本語の語彙知識(音韻知識)の発達と音韻認識およびワーキングメモリ能力との関連性を検討した。3~6歳の日本人幼児における音韻認識およびワーキングメモリ能力の発達を調べ,日本語語彙知識の発達をより正確に予測するのは,音素レベルの音韻認識なのか,音節レベルの音韻認識なのか,モーラの音韻認識なのか,音韻的ワーキングメモリ容量なのかを検討した。以下のことが明らかになった。第1に,音節レベルの音韻認識は,4歳から6歳にかけて発達する。第2に,音素レベルの音韻の認識は,3~6歳の幼児にとって困難であり,年齢差も見られなかった。少なくとも日本語における音素レベルの音韻認識の発達は小学校入学後であると推測される。第3に,未知語の対連合学習の成績は,音節レベルの音韻認識と関連がみられたが,音素レベルのそれとは関連がみられなかった。また,未知語の対連合学習と関連の強かった月齢の要因を統制しても,音節レベルの音韻認識は,未知語の対連合学習の成績を説明していた。他方,未知語の対連合学習と非単語反復の成績に有意な相関関係がみられず,日本語の場合,英語の場合と異なり,音韻的短期記憶の個人差は新しい単語の習得を説明しないことが示唆された。第4に,既存の日本語語彙量は,月齢によってほとんど説明された。
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