本研究の目的は,「英語音声の個々の音韻を認識することに優れているが,音声全体の反復が苦手である」という日本人幼児・児童の音韻処理のメカニズムを,日本語の語彙知識および音韻認識の発達との関係から解明することである。昨年度までの研究成果から,日本語母語幼児や日本語母語大学生が,日本語のモーラのリズムで英単語の音声を分節化していることが示唆された。そこで,本年度は,英語母語話者が,日本語母語話者と異なり,英単語を音節またはそれより大きな単位で分節化していることを検証した。英語母語話者の大学生を対象に,音韻構造の異なる5つの英単語(CVC:hub,CVCVC:heady,CVCC:hidden,CVCVC:hubbub,CVCCC:maddens)を用いた記憶スパン課題を行い,日本簿母語話者のそれと比較を行った。コンピュータを用いて,それぞれの英単語を参加者に提示し,順番通りに反復するように求めた。1単語の段階から始め,次第に単語数を増やしていき,各段階3試行のうち,2試行の反復に失敗した段階の前段階の単語数を参加者の記憶スパンとした。その結果,CVCとCVCVC,CVCCとCVCVCそれぞれのスパンが同じで,前者より後者のスパンが短く,さらにCVCCCのスパンが短い日本語母語話者と異なり,英語母語大学生は,音韻構造の違いにかかわらず,記憶スパンに違いが見られなかった。英語母語話者と異なり,日本語のモーラのリズムで英単語の音声を分節化していることが,日本語母語話者における英語音声の聞き取りの難しさの原因であることが示唆された。
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