研究概要 |
本年度は、発達障害児に対する集団心理療法的アプローチの効果について、心理的適応状況がどのように推移するのかについて縦断的な分析を実施した。筆者を中心に集団心理療法を実施し、そこに参加の発達障害児(H21年度からH22年度に参加したメンバー20名(男性13名,女性7名,平均年齢11.95歳(SD=1.93)))に対して実施された検査結果を分析した。尺度として、Achenbach(1991)が開発し,日本でも井潤ほか(2001)によって信頼性および妥当性が確認され,標準化がなされているCBCLを使用した。(「ひきこもり」,「身体的訴え」,「不安/抑うつ」,「社会性の問題」,「思考の問題」,「注意の問題」,「非行的行動」,「攻撃的行動」の8つの軸からなり,さらに「ひきこもり」,「身体的訴え」,「不安/抑うつ」からなる内向尺度,「非行的行動」と「攻撃的行動」からなる外向尺度と総得点が算出される。70点以上を臨床域,70点未満から66点以上を境界域としている。)。年度(21年度・22年度)を被験者内要因,CBCLの各軸と内向・外交尺度,総得点(高群・低群)を被験者間要因,各得点を従属変数として,対応のあるt検定を行った。その結果,「ひきこもり」,「不安/抑うつ」,「社会性の問題」,「注意の問題」,「T得点」,「内向T得点」において,差が見られ,21年度に境界域を超えていた項目において,有意に得点の減少が見られた。本集団心理療法の中でねらいとした,(1)他者に受け入れられる体験や,(2)自分の気持ちを他者と共有したり,他者の気持ちを聞いて自分の気持ちと折り合いをつけるなど円滑な相互交流をする体験,(3)セラピストの状況理解の促しといったもの影響していると考えられた。今後さらなる長期的な変化や,臨床的な研究との関係も検討する必要があると捉えられる。
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