平成23年度は、発達障害を有する児童のために実施された集団心理療法に過去参加した経験のある児童について、その予後を分析するために追跡調査を実施した。集団心理療法在籍1年以上の経験のある発達障害児・者を対象に、WISC-III、CBCLによる検査を実施すると同時に、半構造化面接によって、現在の学校・職場への適応状況、友人関係/対人関係の状況、家庭での状況、セラピストに対する印象形成、集団心理療法に対する目的意識など、:多面的な面接調査を実施した。その結果、集団心理療法参加後も言語性能力-非言語性能力の領域間ギャップについては未だ残存しているものの、学校適応・職場適応に関する評価指標から見ると、不適応度が相対的に低く、知能水準における領域間乖離を有しながらも社会適応においては良好な調整が行われていることが明らかとなった。そうした背景として集団心理療法に参加していた当初、児童自身は、心理療法の目的として「コミュニケーションの勉強」、「協調性のため」など、社会的場面での対人関係トレーニングとしての認識を保ちつつ、参加していたことが示唆された。こうした目的意識が現在の社会適応の良好さに関連していることが推察された。また、集団心理療法参加に対する印象として、楽しかった場、友だちと関われる場として肯定的な捉えがなされていることも示された。これらのことから、集団心理療法の場は、社会的トレーニングの機能を持ちながらも、対人関係の体験の場としての居場所機能を保つことが重要であり、その中で結果として将来の社会適応につながるようなスキル学習的機能を有することが重要であることが考察された。
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