平成24年度は、小中学校における学校教師を対象に、教師自身が認知する発達障害的特性と児童生徒に対して認知する発達障害特性の関係性についてアンケート調査を元に分析を行った。特に注意欠陥多動性障害や、学習障害、広汎性発達障害、強迫性障害、気分変調性障害と言った様々な精神医学的特徴に焦点を絞り、それらの特徴を教師が自分自身の性格特性としてどの程度合致すると考えるかによって、現在指導している担任生徒の気になる特性がどのように異なるのかについて検討を行った。その結果、教師の発達障害特性の自己認知について、多動・不注意傾向因子、強迫性傾向因子、気分の変調性因子が抽出され、とりわけ、教師自身が多動・不注意傾向を自己認知する場合、生徒の不注意特性について強く意識化していることが明らかとなった。また、教師の強迫傾向が高いほど生徒の多動性・衝動性および広汎性発達障害傾向について高く認知していた。また、気分の変調性が高いほど生徒の不注意傾向を高く認知していた。教師自らが他者の話を聞き漏らしたり、落ち着きがないなどについて自分の特徴として認知している場合、生徒がものをなくす、片付けられない行動などに焦点が当てられてしまうこと、また、教師自身がスケジュール、日課といった枠組みがない状況で不安になる場合、生徒の暴力、暴言、場の雰囲気を読めない行動などに注意が向きやすいことなどが示唆された。これらのことから、小中学校における発達障害児支援においては、それを指導する教師のパーソナリティ特性を踏まえながら、なぜ、児童生徒の行動上の問題が教師において焦点化されるのかについて考慮しなければならないことが考察された。
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