本研究においては,発達障害児の児童期から,思春期青年期への発達移行プロセスに於いて,特に個人心理療法,集団心理療法に参加することを通して,どのような心理的発達経過をたどるのかについて,WISC-Ⅲ,CBCL等の種々のアセスメントを継続的に行いながら,インタビュー調査を併せて実施,検討したものである。発達障害児者自身,および,保護者を対象とした調査・インタビューの結果,幼児期から青年期に至るプロセスに於いて,対人関係スキルを身につけ,また,受容/共感の体験を共有できる集団心理療法への参加の意義が見いだされると同時に,心理療法終結後の長期的なフォローアップ支援の必要性が示唆された。また,児の養育プロセスに於いて,母親は祖父母を初めとする家族関係に於いて様々な葛藤を抱えつつ,自己の精神的健康を維持しながら児の養育に当たっていることが明らかとなった。また,母親は,発達障害児ときょうだい児の関係性の調整も含めた家族内機能を果たしていることが示された。さらに,発達障害児の発達経過においても,多くの心理的困難に直面しつつ,それを解消しながら,児の養育にあたっていることが示された。こうしたことから,専門的支援の立場からは,単なる子どもの養育支援にとどまることなく,養育者の精神的健康の支援に絶えず留意しながら,きょうだいを含む家族関係を視野に入れて心理的サポートを提供していく必要性が示唆された。発達障害児の学校適応においては,教師自身の発達障害特性の自己認知の在り方が児の特性認知に影響を及ぼしていることも示され,児の発達促進のためには,児に関わる大人側の特性を考慮すべき事も示唆された。
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