研究概要 |
本研究の目的は,幼児期(年中・年長)の子どもを対象に,子ども同士がともに教え合い・学び合うpeer tutoring課題を設定し,認知・情動・対人関係的問題を自らの力で考えて解決できるようになる自己(自律的自己)を育てるための就学前教育プログラムを開発することである。平成22年度は,(1)実験的介入手法を用いて,幼児期の子どもに相応しいpeer tutoringを構成するために必要な要因(学習課題,教授目標(動機づけ),柔軟な教授形態,社会・認知葛藤の意識化,など)を特定化し,(2)自律的自己の発達尺度を構成しその妥当性について検証を行う,ことを目的とした。年度前半は,保育観察を通して子どもたちの自律的側面にかかわる行動記録をとり,自律的自己の発達と発達支援に関する研究レヴューを「時間を超えた自己」「心の理論」「情動制御」「対人葛藤解決」「言語獲得」「peer tutoring」をキーワードとして行い,当該研究の展開・現況について精査した。年度後半は,子どもの自律的発達の程度を測定するための課題を6領域に分けて作成し,年長児(15名程度)を対象に実施した。具体的な課題は以下のように構成された。[(1)認知発達(時間経過に伴う世界のあり様についての理解:生物の成長過程,物理的世界の変化,心理的発達過程)(2)情動発達(満足の遅延課題を使った情動抑制についての客観的理解)(3)対人関係(仲間とのトラブルの原因理解と解決能力)(4)心の理論(みえと現実,他者の誤信念理解,心と行動についての表象)(5)教授-学習(ゲームルールの理解と運用)(6)言語特性(平均発話数,文法獲得(統語)の程度)]現在は,(1)各課題の分析作業を通して,,自律性を測定する課題としての妥当性と評価尺度の構成をチェックし,(2)6領域にわたる実験課題を子どもどうし協同で解決できるように課題構造(要因)の組み換え作業を行っている。
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