研究概要 |
本研究は,教師の勇気づけ実践が児童の学級適応及び学級集団過程に及ぼす影響を実験的に検討するものである。平成22年度は,勇気づけの実践学級の教師(2名)と特定の抽出児童(2年生3名と4年生児童5名)に面接を行い,彼らの学級等に対する態度構造の変容過程を追跡的に記述するとともに,従来のデータを加えて勇気づけ実践学級(10学級)と統制学級(11学級)の間の学級適応に関する各測度(「教師との関係」「級友との関係」「学習意欲」など)の差異を検討した。 勇気づけトレーニングは,従来と同様に9セッション計20時間を要した。教師には,トレーニング終了時点から,担任する学級で勇気づけを実践するよう求めた。学級適応の各測度は,実践前,実践中(1ヶ月経過時),および実践後に質問紙(小冊子)を学級に配布して測定した。 まだ標本数が十分とはいえない段階であるが,計21学級の学級単位のデータで,条件(実践学級vs.統制学級)×測定時期(実践前vs.実践中vs.実践後)の2×3の2要因混合分散分析を実施した。その結果,「教師期待認知」測度において2要因の交互作用に傾向が認められた(F=2.07,df=2/38,p<.10)。下位検定を行うと,実践前では両学級間に差はなかったが,実践後においては実践学級の方が統制学級より教師期待認知得点が高いことが認められた。その他の測度では期待された交互作用は有意でなかった。教師の勇気づけ実践は,第一段階として教師一児童間の関係を肯定的に変化させる効果をもっといえるかもしれない。いずれにしてもこの結果は,勇気づけ実践の教育への適用可能性を強く示唆するものである。
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