研究課題/領域番号 |
22530710
|
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
神園 幸郎 琉球大学, 教育学部, 教授 (70149334)
|
研究期間 (年度) |
2010-10-20 – 2014-03-31
|
キーワード | 広汎性発達障害 / 少年非行 / 授業案 / こだわり / 犯罪 / 非行防止 |
研究概要 |
本年度は特定の自治体の教育委員会管轄で指定している小学校1年から6年までの全教科書と指導書、さらには沖縄県内で公開されている小学校の授業案を収集し、各学年の教科ごとに教科内容や単元内容さらには授業案を高機能広汎性発達障害の障害特性に照らして吟味し、内容の妥当性や適切性に関して検討した。通常学級の教育課程における教科内容や単元内容には、PDDの障害特性に照らして、妥当性や適切性を欠くものが多く存在することがわかった。例えば、小学校6年生の理科の単元「燃焼の仕組み」では、「やってみよう」という項目の中に「いろいろなものを燃やしてみよう」との記述がある。想像力の障害があるPDD児は暗黙知としての「燃やしてよいもの・悪いもの」を理解できず記述通りに受け取り、言葉の捉え違いが起きた場合に危険な行為へとつながりかねない。授業者がPDDの障害特性を的確に把握し、火の扱い方や許されないことなどを適切な方法で指導することで、PDD児に特有な実験的で悪意のない行為による犯罪を未然に防ぐことが可能になると思われる。その他、保健体育における性に関する単元、図工における刃物の使用、平和学習における戦時の残虐な映像や写真の提示など、PDDに特に配慮が必要な授業内容が見出された。通常学級に在籍するPDD児は知的に遅れがないために、授業にあたって特別な配慮が必要であるとみなされないことが多く、上述した授業内容の捉え違いの影響には特段の配慮がなされていない。PDD特有の「こだわり」によって起こされた行動が非行に繋がる「悪意のない非行」については、学校における適切な指導によって防止が可能であると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高機能広汎性発達障害児が在籍する通常学級の教育課程における教科内容や単元内容の調査が順調に推移し、所定の成果が収められたため。
|
今後の研究の推進方策 |
沖縄県は特に平和学習に力を入れており、子どもたちは戦時の残虐な映像や写真に触れる機会が多い。平和学習後に「死」に対して異様に興味が掻き立てられ、こだわりへと変質する広汎性発達障害児の事例などが確認された。次年度は沖縄県における平和学習の実態を把握し、広汎性発達障害の障害特性に照らして、その妥当性と適切性についても検討する。
|