本年度は、児童自立支援施設の寮における生活指導場面において、寮指導員が感じる入所児の行動上の特性や指導上困難を感じる項目を通じて、児童自立支援施設入所児の日常生活の実態を把握し、発達障害児やそれが疑われる児童生徒に対して、個々のニーズに応じた配慮のもとで施設における矯正教育としての自立支援が適切に行われているかどうかを検討した。調査結果から、入所児の70%以上に反社会的行動傾向の疑いがあり、寮指導員の多くが反社会的行動について最も指導上の困難を感じていることが明らかになった。そのため、寮指導員は反社会的行動が生起する原因について専門的な理解を深めることが彼らへの指導・支援を構築する上で不可欠である。特に、AD/HDが疑われる児童生徒が約4割程度入所している当該施設の現状を鑑みると、不遇な養育環境や障害特性としての衝動規制、セルフエスティームの低さなどの様々な要因が交錯し、AD/HD が反抗挑戦性障害(Oppositional Defiant Disorder)、行為障害(Conduct Disorder)へと移行する破壊的行動障害の行進、いわゆるDBDマーチ(Disruptive Behavior Disorder March)の渦中にある可能性についても留意するべきであることが指摘された。さらに、児童自立支援施設の現状として、現行の自立支援計画に加えて発達障害児に対する支援計画の策定が望まれることも明らかになった。個別の支援計画の策定にあたっては、生活場面を指導する寮指導員だけでなく、学校教育場面である分校・分教室の教員、加えて専門的な知識をスーパーバイズできる専門家との連携のもとで特別な支援計画を策定することが、児童自立支援施設の指導体制を構築する上で必要であることが強調された。
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