本研究の目的は、教職志望者の「チーム援助志向性(児童生徒の指導・援助場面で積極的にチーム援助を実践しようとする態度)」とチーム援助の遂行能力を高めるためのプログラム開発であった。最終年度の本年は、昨年度の介入実験で使用した「プログラム」を一部改良(チーム援助の成功事例の学習をより重視)し、前年度に介入実験を行った大学とは別の非教員養成系大学において、教職課程科目「生活指導論」を受講する大学生(181名)を対象に、新たな介入実験プログラムを実施し「チーム援助志向性」にどのような影響を与えるかを検討した。その際、「チーム援助志向性」の測定には、前年度に使用した石隈(2000)の「チーム援助志向性尺度(全20項目)」を基にして、本研究で新たに作成し直した「チーム援助志向性尺度(全10項目、「教師自身のメリット因子」「問題解決・対処のメリット因子」「チーム援助に対する不安因子」の3つの下位尺度で構成)」を用いた。 介入実験の結果、女子学生群に「チーム援助志向性」の下位尺度である「チーム援助に対する不安因子」得点が介入実験前より後の方が低下し、統計的な有意差が認められた。一方、男子学生群には「チーム援助志向性」のいずれの下位尺度においても、介入実験前・後の得点に有意差は認められなかった。しかしながら、男子学生群の「チーム援助」の有効性に対する評価や就職後の実践意欲については、介入実験プログラムの効果が一部認められた。さらに、「チーム援助」に対する意識を検討するために、介入実験授業後の感想コメントをデータとして、テキストマイニング・ソフトを用いてクラスター分析を行い、男女別の傾向を検討した。その結果、女子の場合は「チーム援助」のメリットを認知しやすく、男子はデメリットを認知しやすいことがわかった。
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