研究概要 |
視空間処理能力に障害がある児童は,全般的な注意能力および言語性短期記憶に問題はないが,視空間性短期記憶(特に,視対象の特徴や刺激位置の空間配置などの記憶)に困難さを示すことが報告されている。本研究では,学習障害児が示す視空間性短期記憶の困難さが「記銘」(つまり,入力情報の心的イメージ化),それとも「保持容量」に起因するのかを位置情報という空間イメージを記憶材料として検討した。この検討を研究代表者・分担者は22年度から23年度初頭にかけて実施した。実験の結果は,視空間性短期記憶に障害がある児童は,保持量に問題があるのではなく,記銘に各位置を体制化することができないという問題があることを示した。23年度後半では,新たな実験パラダイムを考案し,記銘に要する時間を実験変数として予備実験を開始した。予備実験を終了し,本年2月から本実験を開始して,現在に至る。空間配置という視空間情報を心的に体制化することに障害がある場合,記銘時間の相違による記憶成績への影響は認められないと予測される。視空間処理障害に影響を及ぼす可能性のある様々な変数を利用して,視空間短期記憶の困難さがいずれの要因によるものなのかをさらに明確にする。 1.研究成果は,日本教育心理学会第53回総会で研究代表者により口頭発表された。 2.研究代表者および研究分担者は,23年度の研究成果をJournal of Genetic Psychologyに投稿し,昨年12月に採択された。現在,印刷中である(impact factor:0.99)。
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