研究課題/領域番号 |
22530720
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
伊藤 美奈子 慶應義塾大学, 教職課程センター, 教授 (20278310)
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キーワード | 不登校 / 高等学校 / 予後 / チャレンジ校 / 過去・現在・未来 |
研究概要 |
2011年度は、中学校時代に不登校を経験した生徒の「その後」に注目し、調査を行った。まず、東京都立高校として不登校や中途退学生徒の受け入れを目的の一つとして創られたチャレンジ校である桐ヶ丘高等学校と大江戸高等学校に見学に行き、聞き取り調査を実施した。両校とも、不登校経験者が3割前後入学しており、不登校経験者への配慮や支援も積極的に行っている。通学時間の工夫(朝、昼、夕方という3部制)や授業内容の工夫(基礎基本からの復習や、ボランティア体験の単位化など)、カウンセラーの常設という対応により、不登校から学校復帰を果たす生徒が多いことが確認できた。 また、両校ではアンケート調査(3回)も実施した。中学校時の学校適応状況や支援の実際(過去)、高校入学後の適応状況や自尊感情(現在)、さらには将来展望(未来)などが、どのように絡み合っているかを検討した。これらの結果をふまえると、中学校時代の不登校経験の有無による差は、不登校であった中学校生活に関するものや不登校そのものに直結する得点以外ではほとんど見られなかった。 つまり、中学校時代に不登校であったかなかったが、直接、その後の適応を決めるとはいえないことが確認された。他方、過去の不登校歴をどのようにとらえているかという要素で分析を加えた結果、自尊感情3得点がともに高かったのが不登校経験をプラスにとらえている群であり、この群は勉強や登校への意欲も高く、高校入学動機も前向きであっただけでなく、将来への自信や具体的な進路選択においても前向きな特徴を持つことが示された。これより、「現在(高校生活)」に自信を持ち「過去(中学の不登校経験)」をプラスに捉え直すことができているものは、「将来」に対しても明るい展望を抱くことができるということがうかがえた。 2012年度は、さらに対象を広げ、不登校の予後と必要とされる支援の実際について検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた不登校経験者の予後について、東京都のチャレンジ校での調査を3回にわたり実施できたことは大きな進展であった。2012年度は、同じ学校での再調査を行い、縦断的な調査を予定していると同時に、通信制高校でも大規模調査を実施予定であることより。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度は、同じ学校での再調査を行い、縦断的な調査を予定していると同時に、通信制高校でも大規模調査を実施予定である。この広域通信制高校は、全国組織であり、4000人以上の生徒がいる。教職員ともチームを組み分析についても指導に役立つ形でフィードバックを行う予定である。
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