1991年に看護専門学校卒業生に行った質問紙調査とほぼ同じものを、19年後、40代になった成人女性に行い、青年期から成人期になり、看護師の仕事、結婚・出産・育児等の経験をする中で、対人的枠組みや対人的認知がどの位変動するかについて検討し、また面接調査も実施して変動と関連する要因について検討を行った。 被調査者は1990年看護専門学校3年時に生育史を書いた50名の内連絡がとれる者に調査依頼を行い、それに応じた19名の内、1991年の調査(41名が回答)に回答している15名。内11名-9名には面接調査も実施した。質問項目はIWM尺度、エゴグラム、両親の養育態度、幼少期から各時期の全体的適応感、時間的展望尺度、レジリエンス尺度、現在の満足度、自分の変化に関する自由記述。面接は卒業後の経過、つらかった・大変だったこと、自分にとって重要だったこと、子育て・仕事の意味、生育の過程、自分の変化等についての半構成的面接。 各尺度別に合計点を算出し、1991年の得点と比較し、両者の相関係数を算出し、また対人的枠組み(IWM)の得点の2時期での変化はどの位か、各人の順位が2時期でどの位異なるかの分析を行った。得点差が小さく順位もほとんど変わらない者が見られる一方、大きく変化した者も見られた。2時期とも高得点の者、得点が上昇した者、下降した者、2時期とも低得点の者に分けて、質問紙の他の尺度及び面接での語りの特徴について分析を行った。上昇群は夫との関係のよさ、仕事より家庭に重要性を置く語り、プラス要因をもつ同性の者の影響の語りが見られた。下降群は夫からのサポートの不十分さ、時間的展望や生活満足度の低さ、他群に比べて仕事に対する熱意を述べる者が多いという特徴が見られた。データ数は多くないが、19年後の縦断的データが得られ、対人的枠組みの変化と成人期の経験との関連が示された。
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