青年期から成人期初期にかけて対人的枠組み(IWM)や対人的経験の認知に関する縦断的研究を行ってきたが、更に30代後半から40代前半になり社会人(看護職)や母親として人生を送っている被調査者に、初回から17年~19年後の調査を行った。そして成人女性としての経験を積む中で今まで検討してきたことが更にどう変化するのか、しないのか-青年期から成人期の連続性とそこに関与している要因を検討し、また今までの調査で特徴があった者がその後どうなったかについて検討を行った。 青年期から成人期の連続性やそこに関与しているものについては昨年度も報告したが、17~19年を経ても変わらない者と大きく変わる者が見られ、そこに関与している要因としては配偶者との関係や仕事とのかかわりがあげられた。本年度は更に成人期の適応に関与する要因の分析を行い、成人期の対人的要因だけではなく、青年期の要因も関与していることが示された。また青年期に記述された生育史において母親との関係に問題が見られた5事例が、17年後どのようであるかに関して面接プロトコルを分析した結果、母親との関係が好転して肯定的な関係になっているケースと、問題の質は変わっているが状況によって問題が生じているケースが見られた。2つのコホートで行った対人的枠組みや対人的認知と円環母子画の特徴との関連の検討では、コホートにより関連が違うことが示された。 対人的な枠組みや認知が時期によってどの程度変るのか、その規定因は何かを縦断的手法によって明らかにすることは生涯発達心理学の重要な課題であるが、本研究では青年期から17~19年後の縦断的データを実証的に検討し、量的・質的に興味深い結果が得られた。それらの結果が一時的なものなのか安定したものなのかを確かめると共に、その規定因やその後の変化等について、更に検討したいと考えている
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