本研究は、発達性読み書き障害児の早期発見を目的として、3歳後半~6歳後半の幼児を対象としたスクリーニングテストを開発することである。本スクリーニングテストは、文字を読む・書くという行為を行わずに読み書きに関連ある能力の発達をチェックすることで発達性読み書き障害児の早期発見を試みる点が特徴である。22年度は幼児を対象とした発達性読み書き障害児のスクリーニングテストの検査項目を検討した。検査項目は申請者らが2005年に2歳後半から6歳後半の幼児191名を対象に「ひらがな文字検査」を実施して入手した文字の習得過程に関するデータを基盤に、他の研究者の文字の読み書きに関する研究報告を参考にして、3歳後半から6歳後半の幼児が応じられる課題を選定する。まずは、「ひらがな文字検査」のデータを整理した。結果、音韻分解課題成績が3/3点の割合が70%以上を占める年齢群は4歳前半以降、音韻抽出課題では5歳後半以降であった。「音韻意識」は年齢の上昇に伴って獲得されるが、「音韻分解」と「音韻抽出」の獲得時期は異なっていた。また、「文字単語と絵の結合」「2語連鎖文の理解」「1文字を読む(抽出18文字)」課題は、音韻分解課題成績が不安定であると困難であったが、音韻抽出課題成績が不安定であっても可能であった。以上のことから、文字の読みには「音韻意識」が関わっており、特に「音韻分解」が影響していることが明らかとなった。本結果を踏まえ、文字を読むことができない幼児の「音韻分解」能力をどのように測定するかを検討するために、2011年3月末に3~6歳の健常幼児55名を対象に「音声模倣(4~6音節)」「指さしをしながら数える(3個・5個・13個)」課題を実施した。結果は現在分析中である。予定としては、「ひらがな文字検査」のデータ分析だけではなく、他の研究者の研究報告を参考に検査項目を検討するはずであったが、作業が遅れているため23年度に持ち越し検討する。
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