研究概要 |
昨年度に引き続き,今年度も,地域高齢者を対象として,音読・計算活動を中心とした認知リハビリテーションを実施した。頻度は1週間に3回,これを半年間実施した。査定としては,前頭葉機能を査定するFAB,認知機能を査定するMMSEを実施した。また日常行動を評定するために,日常行動評定尺度を構成し,評定を求めた。調査の結果,抑制機能,認知機能ともに維持・改善する傾向がみられた。日常生活評価についても,複数の項目で変化が確認できた。これら点については,次年度以降も継続的に分析する予定である。さらに,今年度は,運動コントロールへの加齢効果を検討した。対象としたのは,若年成人27名と高齢者39名であった。反応形態(type of response)の違いにより,運動の抑制に影響がでるのかを,2つの年齢群を対象にして比較した。さらに,視覚刺激と同時に提示される音刺激(tone stimulus)が運動の抑制に与える影響を同時に分析した。その結果,高齢者では反応形態の違いが,誤反応率に大きく影響することが分かった。さらに,音刺激の提示は,若年成人,高齢者ともに反応を促進し,反応時間を短くする効果のあることが確認された。しかし,高齢者では若年成人に比べ,誤反応を誘発する率も高くなることが分かった。さらに,高齢者では二重課題条件でも,反応形態の違いによる,error rateへの影響が残った。高齢者においては,運動に付随する神経システムの興奮が運動コントロールに強く影響することが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は今年度に引き続き,地域高齢者を対象とした認知リハビリテーションの効果について,縦断的なデータを収集・分析する。また,来年度は当研究課題の最終年度にあたることから,研究成果のまとめを行い,学術雑誌への投稿を予定している。
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