本研究の目的は、専門家が用いるコミュニケーションにおいて性差やジェンダーを配慮した効果的な対応を明らかにすることである。本研究では、ジェンダーの所有的側面と行動的側面の両側面を捉え、専門家が用いるジェンダー・センシティブ・コミュニケーションのあり方に焦点を当てる。 当該年度では、非専門家の立場から専門家が用いる有効なコミュニケーションの効果を検討した。専門家が合意を得る目的で行うコミュニケーションについて、非専門家の性とジェンダーが及ぼす影響を検討する目的で、青年期の男性女性を対象に質問紙調査を実施した。その結果、女子青年にとっては女性の専門家は対人距離を近くして和やかでリラックスした雰囲気で、男性の専門家は対人距離をやや遠くして真剣でやや緊張した雰囲気で会話を行うことが効果的であることが示唆された。また、女性性が高い女子青年には女性、男性の専門家は両者ともアクティブに、男性性が高い女子青年にはパッシブに関わることが効果的であることが示唆された。 一方、男子青年にとっては男性より女性の専門家のほうが和やかな雰囲気で会話を行い、同意確認を多く用いることが効果的であることが示唆された。また、女性性が高い男子青年に対し、女性の専門家は真剣な雰囲気で相槌を多く用い、男性の専門家は真剣かつ和やかな雰囲気で会話に言切り表現を用いることが効果的である傾向が示唆された。男性性が高い男子青年に対し、男性の専門家は会話内容を唱導方向に対し両面呈示し同意確認を少なくすることが効果的である傾向が示唆された。 以上の結果より、専門家が用いるコミュニケーションはクライアントの性やジェンダーによって変化させることが有効であると考えられる。医療や心理臨床、教育場面において専門家が非専門家と会話を行う際、性差やジェンダーに配慮することが重要であり、より効果的な支援への一助となることに意義があるといえる。
|