平成22年度は、ドイツ・ハンブルク大学のMoritz教授らが開発した「メタ認知トレーニング(metacognitive training : MCT)」の図版およびマニュアルの日本語版を、科学研究費補助金によって作成できた。その際、開発者のMoritz教授には直接ないしは電子メールにて詳細な指導をいただき、連携研究者(丹野義彦〔東京大学〕・井村修〔大阪大学〕)からは基礎心理学的・臨床心理学的見地から有益な助言を得ることができた。また、個人面接用のMCT+(MCT Plus)日本語版もほぼ完成している。ただし、MCT+についてはMoritz教授らも改訂中であるため、完成版ではない。MCTの構成は以下のようになっている。16種類のパワーポイント・スライド(各々8つのモジュールからなる2つのCycleからなる)、マニュアル(日本語版は37ページ)、6つのホームワーク資料(モジュール2と7および4と6で同じ資料を用いる)、参加者に手渡す1枚のイエローカードと1枚のレッドカード。8つのモジュールの内容は、1.「原因帰属」、2.「結論への飛躍バイアス1」、3.「思い込みを変える」、4.「心の理論I」、5.「記憶」、6.「心の理論II」、7.「結論への飛躍バイアスII」、8.「自尊心」である。MCT+も8つのモジュールからなり、8つのワークシートが付属している。これら日本語版の図版とマニュアルが完成したので、23年度以降は臨床の現場で実践が可能になり、認知療法学会と行動療法学会において、MCTに関する3時間のワークショップを開催する予定になっている。
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