研究課題/領域番号 |
22530736
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鈴木 太 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (30542683)
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研究分担者 |
本城 秀次 名古屋大学, 発達心理精神科学教育研究センター, 教授 (90181544)
金子 一史 名古屋大学, 発達心理精神科学教育研究センター, 准教授 (80345876)
吉川 徹 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (70456680)
栗山 貴久子 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20542682)
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キーワード | 自傷行為 / 心的外傷 / 境界性パーソナリティ障害 / 易怒性 / 気分調整不全 / うつ病 / EMDR / 対人関係療法 |
研究概要 |
平成22年度は、研究計画の細部の調整のため、青年期に事例化した患者のうち、自傷行為を生じるリスクが高いと考えられる精神障害に関する調査が行われた。境界性パーソナリティ障害の行動特徴を認めた青年期(12-17歳)患者8例の調査では、全例が女性であり、両親の離婚もしくは別居が4例、虐待歴が3例に認められた。初診時点では全例が不登校の状況であり、自傷行為が8例に認められ、初診後に精神科病棟での入院加療が必要となったのは5例であった。境界性パーソナリティ障害の診断基準を完全に満たすのは6例であった。一方、双極性障害を診断された青年期(12-18歳)患者10例の調査では、患者のうち6例が男性、4例が女性であり、両親の離婚もしくは別居を経験した症例はなく、自傷行為は3例に認められた。自傷行為の認められた男性は双極性障害を伴う1例のみで、気分安定薬と抗精神病薬の多剤併用による治療が必要であった。 以上の調査及び先行研究の検討により、本研究では、治療の対象を比較的均質な集団に絞り込む必要から、包含基準に女性であること、除外基準に双極I型障害がそれぞれ含まれることとなった。また、精神科病棟での入院加療が必要となる症例の多さが明らかとなったことから、自傷行為を伴う青年の入院加療が必要に応じて可能な体制の構築が急務となった。また、欧米の先行研究と同様、青年期の境界性パーソナリティ障害における過酷な養育環境が明らかとなった。自傷行為の発症と持続を心的外傷モデルで理解できるか否か、という命題を本研究の新たな目標として設定し、眼球運動による脱感作と再処理法(EMDR)の対照群として用いられる「青年期うつ病の対人関係療法」(IPT-A)に関する治療マニュアルの翻訳を進めた。
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