研究概要 |
本研究の目的は,セラピスト-クライエント間の齟齬の生起とその解消にまつわる機構の解明を,「聴き方/聴かれ方」という聴くことにまつわる相互作用の観点から,臨床心理学,聴覚・音声学,認知科学,情報学の手法を組み合わせ用いることで,お互いの発話をうまく聴いたり,聴かれたりしていくための音声とうなずきの微細な関連性を解きほぐしていくことによりすすめることである。初年度になる本年は,以下の3つの作業をすすめた。1.収集済みの対話データの検討:初年度前半は,収集済みデータに対して,対話データのマルチモーダルな分析による知識発見及びカウンセリング学習者への知識の還元と効果の検証を実行した。2.対話データの拡充:1.と並行して,年度を通じデータを拡充した。初年度後半は,1.及び3.を受けて,適宜手続きを修正し,新たに拡充したデータの検討に入った。ここでは,セラピストとクライエントの発話や身振り(認知科学;古山)と聴き方/聴かれ方(聴覚・音声学;入野)の特徴量を,面接への影響や成否(臨床心理学;花田)の点から解釈し,知識化する(情報学;井上)。具体的には各研究者の対話分析の手法を以下のように適用した。入野が自ら開発した加速度センサによる音声-頭部運動同時計測手法により得られたデータを,音声信号処理技術と聴覚/音声データを分析対象により解析し,セラピストとクライエントの音声とうなずきについて定量化した。古山がそれら要素の位相関係や関係性の変化を対話環境の動的変化を捉える(構成的)手法により把握した。抽出された特徴量について,花田が齟齬の生起や解消が面接全体の進行に与える影響や成否の点から解釈した。以上を受けて,井上が分析・統合的(帰納的)手法により,知識の定量的特性及び信頼性を確認した。3。成果発表:1.の成果を学会や研究会で報告し課題を確認した。2010年7月開催のThe 4th conference of the International Society for Gesture Studies他で報告を行った。
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