研究概要 |
筋ジストロフィーは進行性の病で,予後不良のため,病名の告知や病態の説明は困難である。すなわち告知の作業は医師にとっても容易ではなく,患者や患児自身にとっても辛い側面に直面させられる。しかし自己の病に関心を持ち情報を求めている場合もあり,適切な時期の病気の説明は,彼らの心理的安定を促進すると予想される。本研究では,筋ジストロフィー患児や患者の診療に携わる,小児神経科医の告知に関する意識調査を実施した。また,成人患者を対象として,これまでどのように病気の説明を受けてきたのか,さらには望ましい告知のあり方について聞き取り調査を行った。家族に対しても,どのように告知を受けたのか,アンケート調査を行った。成人患者は比較的早い時期からの告知を希望していた者が多かった。家族は診断時に心理的に衝撃を受け,患児への説明をためらう者と,比較的早期から患児と病気に関する情報を共有する者に分かれた。医師については,病気の説明が必要であると認識している者が70%程度であり,そのためには患児や家族との信頼関係が重要であると回答していた。また告知時や告知後の心理的サポートのため,臨床心理士やケースワーカーなどの協力が必要であると考えていた。患者,家族,医師は告知の必要性を感じていることが明らかになった。しかし告知の体制や方法については課題が残っていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筋ジストロフィー患者,患者家族に対するインタビュー調査,小児神経科医対するアンケート調査を行い,その概要を第53回日本小児神経学会において発表し,患者へのインタビューのデータの一部を学術雑誌に投稿し受理された。
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