筋ジストロフィー患者への病名、病態告知の望ましいありかたについて調査を行った。筋ジストロフィーでは、告知の心理的衝撃や子どもの病気の理解・受容能力に配慮し、これまで親への告知は行われるが、患児自身に対しては積極的になされて来なかった。しかし、思春期においては、インターネットの不適切な情報から、将来への不安が高まったり、親子関係の悪化を招いたりすることがある。そこで、本研究では、望ましい告知のありかたについて、成人患者やその家族へのインタビュー、筋ジストロフィーの診療経験のある医師を対象にアンケート調査を行った。 成人患者では、思春期の前後に病名や予後を含んだ、病態の説明を望む者が多かった。その理由は、「わからないでいるのは不安」「体を動かせるうちにやりたいことをしたい」などであった。ただし、治療の可能性も含め「希望の部分」も伝えて欲しいという意見もあった。保護者は、積極的な者と慎重な者が、半々の割合であった。積極的な者は、「いずれわかるから」「親子で病気に立ち向かうため」などであり、慎重な者は「子どもの負担になるから」などであった。311名の医師を対象とした調査では、思春期の仮想事例への態度を測定した。7割の医師が告知に積極的であった。その際、両親の病気理解、医師と患児や家族との信頼関係を重視していた。また、医療的サポートと心理的サポートの重要性を回答していた。しかし、臨床心理士などのスタッフの必要性を感じながら、整備が遅れているとの指摘があった。 遺伝子治療により、筋ジストロフィーは治癒可能となり、告知の問題は解消されるかもしれない。しかし、まだそれまでには時間が必要であり、現在療養中患児や家族への心理的サポートは、彼らのQOL向上には必要である。告知の問題は彼らの重要なテーマであり、基礎的なデータを収集するとともに、支援の方法の構築が求められる。
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