研究概要 |
認知心理学で熱心に研究されている研究テーマとしてネガティブプライミングがある。もともとネガティブプライミングは、ストループ課題を使って、見いだされた現象であるが、臨床検査法としてのストループ検査にはこの成果が十分に生かされていなかった。本研究は、基礎的な認知心理学の実験場面と、フィールド実験と臨床場面とを繋ぐ研究として計画された。ネガティブプライミングとは、先行試行に含まれるワード(e.g.,あか)を抑制しなければならないとき、その後の試行で命名すべきカラーが(e.g.,あか)で現れたときに反応時間が遅くなり、ストループ効果が強くなる現象である。このような時系列の効果は、時系列効果としてのコンフリクト適応効果(不一致試行の後で、ストループ効果が低下する効果)と対比する効果として盛んに研究されている。今年度は、実験室において、ボーカル反応だけでなく、キーボード反応(4選択と2選択)も取得した。そして、これらのコンフリクト適応効果とネガティブコンフリクトとの関係、およびストループ干渉量の関係を調べた。さらに、臨床場面で行われていた検査法の時系列の出現順序について検討した。従来の検査法は、出現順序について十分検討されていないことが分かった。その成果は、日本心理学会第74回、第75回大会で発表ないし発表予定(ワークショップを含む)である。さらにMemory & Cognitionに投稿済みである。集団式の簡便なノートパソコン接続の検査法(ボタン押し)の開発を行い、データ取得まで行うことができた。出現順序をコントロールすることにより、基礎実験場面で行われてきた成果をフィールド場面、臨床場面に応用するとともに、フィールド場面、臨床場面で、ネガティブプライミング等の時系列の反応データを取得することが可能になった。
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