研究概要 |
認知心理学で熱心に研究されている研究テーマとしてネガティブプライミングがある。もともとネガティブプライミングは、ストループ課題を使って、見いだされた現象であるが、臨床検査法としてのストループ検査にはこの成果が十分に生かされていなかった。本研究は、基礎的な認知心理学の実験場面と、フィールド実験と臨床場面とを繋ぐ研究として計画された。ネガティブプライミングとは、先行試行に含まれるワード (e.g., あか) を抑制しなければならないとき、その後の試行で命名すべきカラーが (e.g., あか) で現れたときに反応時間が遅くなり、ストループ効果が強くなる現象である。最近は、この効果は時系列効果として、他の条件を含めて検討されるようになりつつある。このような効果を調べるには、毎回の反応時間とエラーを調べる必要があるとともに、前後関係の頻度の統制が必要不可欠である。本研究では、今までに作成されたストループ検査の前後の頻度を調べることから始めた。その結果、一番統制されていたのは、オリジナルのStroop (1935) が作成したものであり、時代が後になるにつれて前後の頻度が統制されていないことがわかった (日本心理学会ワークショップで発表)。ノートPCで簡便に行える検査を作成した。周辺ノイズの効果をし調べることによって、実験室内とフィールドとの比較を行った。結果違いが見られないことから、フィールド実験の妥当性を得た。外部からの音声ノイズ効果については、バイリンガルを参加者とした実験によって、母国語の場合ほとんどノイズの影響を受けないこともわかった。成果は、Attention, Perception, & Psychophysicsに投稿した。またネガティブプライミングに関する研究動向をまとめて、培風館から「認知コントロール」として刊行した (2012年)。
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