教師の自殺の背景について、1)統計的因果分析と個別的な事例研究とを有機的に結びつけることで捉え直し、2)教師の自殺の促進要因として考えられるバーンアウト(burnout)と、抑止要因として考えられるソーシャルサポート(social support)およびレジリエンス(resilience)との連関構造を明らかにする。そのうえで、教師の自殺予防の具体化に向けて、3)援助希求性とレジリエンスを高めるにはどのような側面への働きかけが有効であるかを明確にし、4)将来教師をめざす学生に実効性をもつ教員養成段階における包括的自殺予防プログラムの開発を試みることが本研究の目的である。 プログラム開発は次の3段階で進めてきた。①教師の自殺の現状把握と自殺予防プログラムの実施状況調査(平成22年度)②教師をめざす学生のための包括的自殺予防プログラムの試行、および効果検証(平成23年度)③包括的自殺予防プログラムの教材化(平成24年度)。 本年度は、教員養成段階の学生を対象とする「教師自身のための自殺予防プログラム」の教材化を図り、本学学校教育学部3回生(160名)を対象に,学部授業科目「生徒指導論」においてプログラムを実施し、自殺予防に関する認識と援助希求性の変化,およびレジリエンスと自殺親和度の変化について検討を行った。その結果,認識の深まりと,レジリエンスの高まりがみられた。また,その必要性や内容に関して自由記述による効果検証を行った結果,必要性に関しては8割を超える支持を得た。そこで得られた成果をもとに、教師に対する自殺予防の方向性と課題について、第11回日本生徒指導学会フォーラムにおいて発表した。また,兵庫県教育委員会所管の「高校生等の自殺予防に関する委員会」において,教師向け,生徒向け,保護者向けの包括的自殺予防プログラムの具体化に向けた取組を委員長として推進している。
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