研究概要 |
本年度は,マインドフルネスの効果メカニズムを検討する実験研究2つと,マインドフルネストレーニングの効果をもたらす構成要素としてself-compassionに注目し,その概念を検討する研究を3つを行った。 マインドフルネスの効果メカニズムについては,前年度の研究を発展させ,「腑に落ちる理解」と認知的柔軟性との関連を検討した。認知的柔軟性が高いと「腑に落ちる理解」を得やすい,という仮説のものと,研究1では,認知的柔軟性が高い者と低い者を対象に,「腑に落ちる理解」の程度とそれが行動に及ぼす影響を検討した。研究2では,ホワイトノイズによって認知的柔軟性を低下させる操作が,「腑に落ちる理解」に及ぼす影響を検討した。2つの研究から,認知的柔軟性は必ずしも「腑に落ちる理解」をもたらす要因でなく,認知的柔軟性を低下させるとむしろ「腑に落ちる理解」を得やすいことが示された。ここで得られた理解は,「盲信」に近いものであると考えられた。 次に,Self-compassion (SC)については,(1)尺度作成,(2)Neff & Vonk(2009)の追試,(3)-構成概念妥当性に関する実験研究を行った。研究1は,Self Compassion Scale Short Form (Raes et al.,2011)の日本語版を作成した。これを用いて,研究2では,自尊心とSCの相互の影響を検討した。先行研究では自尊心はSCを統制すると精神健康との関連が消失したが,本研究では,怒りを除いてそうした効果は示されなかった。少なくとも怒りの鎮静に対しては,自尊心はSCを介して関連していることが示された。そこで研究3では,他者から拒絶される怒りに対する自尊心とSCの影響を実験的に検討した。その結果,通常怒りが喚起される場面においても,自尊心が低くSCが高い入は怒りの表出反応が見られないことが明らかとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は,当初の目的に向けて幾分軌道修正しながら,最終年度の介入研究に向けて準備を進めていきたい。理論やメカニズム研究に力を入れてきた傾向があるので,次年度は,実践場面で必要な情報を収集することを重視した研究を行う予定である。
|