研究概要 |
本年度は,2つの介入プログラムの効果研究と,一つの効果のメカニズムに関する実験研究を行った。研究1では,医療,教育,福祉領域で人の支援に携わる専門家を対象としたマインドフルネスに基づく8週間プログラムを策定し,その効果を検討した。インフォームドコンセントに同意した16名の参加者に対して,MBCTに準拠した瞑想中心の2時間×8週間のプログラムを策定し,介入を実施した。8週間継続的に参加できたものは10名(M=44.4,SD=7.13)あった。この10名を対象に効果の分析を行ったところ,マインドフルネス,セルフコンパッション,ワークストレスの各指標において有意な低減が示され,1ヶ月後のフォローアップでも効果は維持されていた。 研究2では,中学生の学校適応感を対象に,学級活動の中で瞑想によらないプログラムを展開し,その効果を検討した。1年生4クラスの生徒に対して,週1コマ×4回,遊びやゲームを通してマインドフルネスやコンパッションを高めるワークを導入して,その効果を検討した。その結果,学校適応感に有意な変化は見られなかったものの,マインドフルネス,セルフコンパッションの指標,また,生徒が感じるクラスの「温かさ」の指標において有意な改善が見られた。 さらに,瞑想であれレクリエーションであれ,マインドフルネストレーニングに不可欠な要素として,身体性の重要性が指摘されている。そこで,マインドフルネストレーニングの効果における身体への気づきの影響を検討する実験研究を行った。その結果,道徳判断に及ぼすマインドフルネスの影響を,身体への気づきが部分的に媒介することが明らかとなった。 近年のマインドフルネスブームの影響か,瞑想に対する抵抗感は一般に減っているようであるが,特に子どもを対象とする場合にはレクリエーションの方が有効と考えられる。その際,身体への気づきの要素は不可欠と言える。
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