本研究では、非行少年の家庭・学校・地域等の生活環境における様々な被害体験を踏まえた上で、非行少年の心理特性と非行性の関連について明らかにすることを目的としている。被害体験が性格特性や非行性にどのような影響を与えているのか明らかにする中で、適合性の高い関連図(パス図)を作成する。さらに、被害が発生した際に生じる怒り等の感情や心理特性に注目し,その体験をどのように克服できるのか検討し,非行少年の更生のための手だてや回復への道のりを探って、改善・更生に向けた道筋について考察する。 昨年度までに実施した第1次調査及び第2次調査(非行少年調査及び一般青年調査)を踏まえて,平成25年度は研究計画の最終年度であるため,これまでの研究成果のまとめを行った。非行少年が入所する矯正施設(少年鑑別所等)との協力関係に基づいて,非行少年に関する情報・データの整理及び再分析を進めた。また,一般青年の調査結果も合わせて,被害体験を受けた際の援助者の有無,信頼関係の程度,援助行為の内容などについて再検討し,さらに疎外感や無力感などの心理特性との関係について,これまでの知見をまとながら検討を進めた。 なお,これまで非行少年に対する援助者の役割と改善・更生への手がかりについて探ってきたが,現時点までの調査においては明確な結果が表れていなかったことを鑑み,新たに質的データに基づく調査を行って被害体験からの回復におけるプロセスについて再検討した。特に,被害経験からの回復の方向性を探るにあたって,自らの被害経験についてどのように受け止めているか,あるいは受け入れるようになったのか,さらには回復の手立てについてどのように考えているのかなどについて,回想的記憶をもとに分析を行った。非行少年と一般青年における被害経験回想記憶の質的相違にも着目しながら,非行少年の回復の手がかりを探り明らかにした。
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