本研究の目的は、中学生の健康領域における「誤った認識」について、健康リテラシーの中核的な要素である「批判的思考」との関係から特徴づけるとともに、その改善のための方法を明らかにすることである。本年度は、中学生が健康領域で形成しやすい「誤った認識」の実態と形成過程を探索するために、次の研究を行った。 1.中学生の健康領域における「誤った認識」の事例を収集するために、中学校に勤務する養護教諭を対象に質問紙調査を実施した。その結果、「誤った認識」についての具体的な記述が得られ、それらを基に、「誤った認識」のテスト項目を作成した。また、学校健康教育の専門家に、テスト項目を検討してもらい、内容的妥当性の確保を図った。 2.上記1で作成した「誤った認識」のテスト項目、及び、健康情報行動や保健学習状況に関する質問紙を用いて、中学2年生260名を対象に調査を実施した。比較対照群として、高校2年生320名にも実施した。その結果、「誤った認識」の因子構造に基づき下位尺度を構成し、それらの信頼性の確認を行った。また、質問紙の結果から、中学から高校にかけての健康知識に対する自己評価の上昇は、保健学習以外の情報源の拡大と、それらからの情報に対する無批判な受容に起因している可能性が示唆され、批判的思考の重要性が明らかになった。なお、以上の成果は、日本教育心理学会第53回総会にて発表予定である。 3.「誤った認識」の形成過程の仮説モデルと、健康領域固有の「批判的思考」の概念枠組みを作成するための資料を得るために、上記2の対象者のうち、テスト成績の上位者と下位者を選出してインタビュー調査を行った(十分なデータを確保するために、次年度も継続実施)。
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