昨年度に引き続き、「批判的思考」が「誤った認識」の形成に及ぼす影響の検証を進め、その結果に基づいて健康領域における「誤った認識」の改善方法の提案を行った。 1 昨年度の結果を踏まえ、健康領域における「誤った認識」を「けがの手当」に絞り、 松戸市、柏市、我孫子市の全公立中学校の養護教員46名を対象に典型的な事例を収集した。その結果、「鼻血」、及び、「つき指」の手当が誤った認識を形成しやすいと判断した。 2 昨年度開発した「批判的思考尺度」を再検討し、健康リテラシー尺度として再構成した。既存の批判的思考態度尺度との相関分析から、妥当性を確認した。 3 中学生261名を対象に、上記1、2を使用して調査を行った。主な結果は次の通りであった。(1)「鼻血」で約8割、「つき指」で約2割が誤答した。両問題ともに誤答パターンは特定のものに集中しており、「誤った認識」には典型的な誤り方があることが示唆された。(2)回答者の情報源をみると、正誤にかかわらず学校の先生、家族、部活の指導者であった。このことから、情報源となる身近な人が、「誤った認識」を保持していることがうかがえた。(3)両問題ともに誤答した者と正答した者の健康リテラシーと批判的思考態度を比較すると、健康リテラシーの「健康情報の活用志向」尺度でのみ有意差がみられ、誤答者の方が高い得点であった。このことから、誤った概念を維持したまま健康情報を積極的に活用してしまうという、新たな問題が明らかになった。 4 上記の結果から、「誤った認識」が容易に変容されないことを踏まえ、保健授業を改善するための視点を検討した。
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