研究概要 |
本研究の主たる目的は,就学前の幼児を対象に,気質を基盤とした子どもの自己制御と養育者のしつけ方略及び子どもの社会適応との関連について,縦断研究を通して明らかにすることである。研究目的を達成するにあたって,平成23年度の研究実践計画の主な二つの柱は,1.平成24年度に実施予定の第2回目の質問紙調査(追跡調査)において、より多くのデータを収集するために調査協力者を募ること,2.平成22年度に実施した調査結果について公表すること,であった。 1の調査計画については,新たに調査協力に同意を得た養育者150名より質問紙を回収した。今年度の調査では育児に関するサポート認知の項目を新たに加えた。これは,平成22年度の調査結果よりサポート認知がしつけ方略に及ぼす影響を明らかにし,第2回目の調査の充実を図るためである。 2の研究結果公表に関しては,日本心理臨床学会にてポスター発表を行った。発表内容の一つは,しつけ方略尺度を作成したため,その尺度の信頼性の検証結果である。具体的には,しつけ方略尺度50項目について,因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行い,「誘導的・援助的しつけ」,「体罰・脅しによるしつけ」,「感情的/愛情の除去によるしつけ」,「一貫性のないしつけ」,「物的報酬/罰によるしつけ」,「過干渉・強制的しつけ」の6つの下位因子に分けられ,十分な内的整合性が得られた。二つには,子どもの能動的制御機能の高さが反応的制御の衝動性や、過度の抑制やしつけ方略と子どもの行動に及ぼす影響に関する結果である。具体的には,反応的制御/報酬への感受性と物的報酬および誘導的しつけとの間に有意な正の関連,反応的制御/罰への感受性と物的報酬との間に有意な正の関連,誘導的しつけと向社会的行動との間に正の関連がみられ,養育者は子どもの行動特徴にあったしつけ方略を用い,また援助的なしつけ方略は子どもの適応的な行動を導くことが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,本研究の目的を達成する年度にあたる。まず,一回目の質問紙調査に協力いただき,二回目の調査にも協力同意を得た被調査者に,第二回質問紙を郵送し,縦断調査データを収集する。その後,データ入力,統計解析を行い,本研究の主たる目的である,子どもの特性と親のしつけ方略の相互作用過程と子どもの問題行動及び向社会的行動との関連を検討する。また,第1回目調査において,まだ公表していない結果については,9月の学会で公表する。縦断研究結果(1回目調査と2回目調査を合わせた)は3月の学会で公表し,第二回目質問紙調査に協力していただいた協力者に結果をフィードバックする。
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