研究概要 |
今年度は、がん患者の治療とその副作用に伴う心理的ストレスとQOLについて, 以下の検討を行った。 ① 初診時に測定した心理特性(感情抑制、ストレス経験の認知、特性不安)と術後1年前後の乳がん患者の心理的ストレスとコーピングについて主に検討した。その結果、感情抑制傾向、否定的ストレス経験、および特性不安といった心理特性が、術後1年前後の乳がん患者の心理的ストレスおよびコーピングと関連していることがわかった(Kitasato Med J 43:49-56)。さらに、無気力/絶望感、予期不安、回避といったコーピングが、乳がん患者の心理的ストレスと関連していることがわかった(日本健康心理学会第26回大会にて発表)。 ② 化学療法前後でのコーピングおよび心理的ストレスについて、特性不安との関係から検討した。その結果、化学療法前において、特性不安の高い患者は特性不安の低い患者と比べて予期不安が高く、否定的感情の表出が多いことがわかった(第26回日本サイコオンコロジー学会総会にて発表)。 ③ 緩和ケア病棟入院前後の患者・家族が置かれている状況を理解するために、緩和ケア病棟勤務の看護師を対象にアンケート調査を実施した。その結果、入院前の患者・家族のみならず、一般病棟で働く医療者に対しても、緩和ケア病棟における治療内容、入院の条件などの十分な説明が必要であることが示唆された(Palliative Care Research 8:361-370)。 以上より、主にがん患者の治療経過にかかわらず、感情抑制、否定的ストレス認知、特性不安といった心理特性が、がん患者の心理的ストレスおよびコーピング(無気力/絶望感、予期不安、回避)に影響を与えていることがわかった。特に、化学療法前において、特性不安の高さが否定的感情の表出の増加およびコーピング(予期不安の強さ)と関連していた。
|