研究概要 |
目的 自己への思いやりを上昇させるための介入を行い,その効果を実験的に検討する。 方法 参加者 大学生200名程度に調査を実施し,自己思いやりが低い人を参加者とした。スクリーニングされた参加者を介入を受けない統制条件と介入を希望しているがすぐに介入を開始しない待機群,介入を行う介入群とランダムに配分した。 手続き Gilbert(2009),Gilbert&Procter(2006)で示されている思いやりのワークを2-5名グループで実施した。ワークには,慈悲の瞑想,マインドフルネス・トレーニング,思いやりのある手紙を書く,思いやりのある考えを思い出す,感情のアクセプタンス,第3の椅子の練習などが含まれていた。第3の椅子練習であれば,恥の経験による自己批判に対して,自分を攻撃する椅子,攻撃されたことに反論する椅子,2つの椅子に対して共感する椅子に座り,それぞれの立場で考えを述べるようにした。 結果 介入の前後に自己への思いやり,否定的自動思考,抑うつ,不安,多面的感情特性(恥,罪悪感など)を測定し,介入前後での評定値の違いを検討した。分散分析の結果,自己思いやり,自己否定(自動思考),恥傾向が介入群で減少し,3ヶ月フォローアップでもその効果が持続していた。 考察 以上の結果から,Compassion Focused Therapy(CFT)が,我が国でも欧米と同等の効果があることが示された。今後は,臨床群を対象としたり,コミュニティを対象研究が臨まれる。その場合,セッション数やその内容の検討も必要だと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
国際学会での発表を通じて,自己思いやりの認知行動療法を行っている様々な研究者から意見を得て,研究計画,介入方法を再検討する。また,介入研究においては,WEBを利用して参加者を募り,大学生に限定しない知見を得るように努力する。
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