研究概要 |
1「研究目的と計画」 (D大学生における自閉症スペクトラム障害をスクリーニングできる指標として、ケンブリッジ大学版の自閉症スペクトラム指数(AQ;Autism-Spectrum Quotient)の適用性と妥当性について昨年に引き続き再調査して検討する。(2)大学生における精神的健康状態の指標として主観的健康感(GHQ)・抑うつ症状・強迫性格を測定する尺度を用いて、自閉症スペクトラム指数との関連性を検討し、思春期以降に問題となる発達障害の二次障害の要因を探ることを目的とする。 2「研究方法」:(1)調査対象:首都圏の大学に在学する1年~4生計403名(男子253名,女子150名) (2)調査内容:(1)自閉症スペクトラム指数(AQ,Baror-Cohen,2001)の5下位尺度「社会的スキル」「注意の切り替え」「細部への注意」「コミュニケーション」「想像力」および合計得点を算出した。また、AQの関連要因として、(2)主観的健康観(GHQ-30):「一般的疾病傾向」「身体的症状」「睡眠障害」「社会活動障害」「不安と気分障害」「希死年慮うつ傾向」の5下位尺度(3)抑うつ尺度(SDS)(4)強迫性格尺度(Obsessive Personality Trait Scale)をとりあげそれぞれとの関連について性差を考慮して検討した 3「主要な結果」:(1)自閉症スペクトラム指数(AQ)の分布では、低得点群(0~14点)では男子23.1%,女子34.6%、平均点群(15~26点)では男子68.9%,女子54.1%、高得点群(27~50点)では男子8.0%,女子11.1%となっており先行研究および昨年の結果とおおむね一致している。 (2)AQと関連要因との間には多くの相関がみられ、男子ではAQおよび下位尺度の「コミュニケーションの欠如」と「強迫性格」との相関が最も高く、女子ではAQと「抑うつ」との相関が最も高く、また「社会的活動障害」との相関もあることが示された。発達障害の二次障害が出現している可能性がうかがわれ、大学生のメンタルヘルスや修学就労支援を考えていくうえで重要な結果が得られたと考えられる。
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