研究概要 |
本研究は,全国約750の国・公・私立大学の学生相談機関を対象にして質問紙調査を実施し,提案されたモデルの妥当性を検証すること,訪問調査により質問紙調査の結果とあわせて,学生相談機関の発展に寄与する学生相談活動の類型を抽出することを目的として実施されている。 まず,前年度に作成,発送した全国調査について,回収された356の回答(回収率は48.9%)に基づき分析を行った。まず,回答の基本統計について分析を行い,これらの結果をまとめて全国の大学に発送し,調査結果のフィードバックを行った。 次に,訪問調査が可能と回答した2大学における訪問調査を計画し実施した。訪問調査では相談実務担当者にインタビューを行い,当該大学における学生相談の状況についてたずね,これをICレコーダーにより録音した。ここで得られたデータは,このあとの統計的分析の妥当性の検証のための補助的資料として活用された。 次に,全国調査の回答に不備のない268大学の回答をもとに学生相談機関の類型の抽出を試みた。まず,「学生相談機関規定尺度」の尺度構成を行い,その得点によってクラスタ分析を行った。その結果,比較的まとまりがよく解釈が可能な5クラスタ(「条件不利型」「未整備型」「ねじれ型」「大学消極型」「条件有利型」)が得られた。次に,学生相談機関の「発展」に寄与する要因を探るために,クラスタ別に重回帰分析を行った。この結果,学生相談機関の類型により,「発展」に寄与する要因が異なることが示唆された。 本年度に行われた研究により,学生相談機関が今後さらに発展するためには,学生相談機関の類型を考慮した実践的工夫が必要であることが示された。従来の実践的工夫は学生相談機関の差異を考慮してないものであり,本研究はこの点について新しい知見を加えることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,平成23年度中に分析した結果について,2つの学会において学会発表を行い,成果の還元を行うとともに学会での意見交換により,研究の成果の質をさらに向上させる。この作業により研究のまとめを行い,関連する学術雑誌への投稿を行う予定である。
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