研究課題/領域番号 |
22530764
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
高瀬 由嗣 明治大学, 文学部, 准教授 (80326553)
|
研究分担者 |
藤岡 新治 専修大学, 人間科学部, 教授 (00156837)
齊藤 恵一 北海道医療大学, 公私立大学の部局等, 講師 (50292131)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | ロールシャッハ・テスト / データベース / 解釈の支援 / 妥当性 |
研究概要 |
本研究の目的は,ロールシャッハ・テストの解釈の妥当性を高める方策として,データベースを用いた解釈支援システムを構築することである。すなわち,膨大な情報を利用して,いま目の前にあるロールシャッハ・プロトコルの客観的な位置づけを把握することにより,解釈の妥当性を高めようとする試みである。膨大なデータから引き出される情報は,解釈のための客観的かつ明確な根拠となる。この最終目的に到達するために,平成24年度は, (1)登録データの補充,(2)これまでに登録されたデータの整理,の2点を中心に作業をすすめた。 まず,(1)データの補充を行なった。データ収集にあたっては,研究分担者の専修大学に協力を要請し,性別・年齢・教育歴などの要因に偏りのないよう,バランスよく行った。一方,(2)これまでに登録されたデータの整理を行うべく,約8,000個にわたるロールシャッハ反応のスコアの見直しと,新たに思考障害に関わるスコアの登録を行なった。この作業は,精神疾患の査定の妥当性を高めるための基礎固めと位置づけた。 上記のデータベースを活用し,平成24年度は具体的に以下の研究を行なった。すなわち,(a)ロールシャッハ・テストの人間運動反応に現れた反応内容の特徴を整理・分類し,それと思考障害との関連について検討したこと,(b) データベースの中から,同一被検者に対してロールシャッハ・テストとTAT(主題統覚検査)の両方が実施された2事例を抽出し,その徹底的な分析と解釈を通して,この2つの投映法心理検査の共通性,独自性について検討を行なったこと,の2点である。これらは,いずれもロールシャッハ・テストの解釈の妥当性を検討するのに役立つ研究である。なお,(a)に関しては,現在,論文にまとめ,国内の学術誌(査読付)への投稿準備中である。また,(b)については,学外の査読付学術誌に採択され,掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データベースへの登録を許可されたケースは現在約700ケースとなった。反応語,反応領域,そしてスコアのすべてを網羅したロールシャッハ・テスト記録のデータベースとして,この700という数は世界に誇れるものと思われる。ただし,論文の公刊等,研究成果の公開が十分とはいえなかったため,上記の評価とした。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,言語・画像検索だけではなく,スコア情報に基づいた検索システムを確立する予定である。これについては,膨大なデータをもとにそれぞれのスコアや各指標の分布を調べ,T得点のような標準得点に換算することを計画している。また,「M:ΣC」のように比率が問題となる場合は,これを「M÷ΣC」などの比率得点に置き換えて,個人の相対的な位置づけの確認が可能になるように工夫したい。なお,この計画は,システム・エンジニア等の専門家の協力を得て,進める予定である。
|