研究概要 |
本年度は、ニューロフィードバック(neurofeedback;NF)法を健常な学生を対象に適用し、θ/βおよびSMRトレーニング前後での生理的・心理的変化に関する評価、また、トレーニング経過に伴う主観的変化に関する質的検討を行った。 生理的変化については、脳波周波数分析の結果から、協力者はβ帯域成分が増大する状態を各自学習し、その状態も一定程度維持されていたことが確認された。一方,SMRトレーニングにおいては,協力者はSMR帯域成分が増大する状態をある程度学習したものの,維持することは難しかった。 心理的変化については、トレーニングの開始・終了時点で評価を行い、ADHD特性チェックリストを用いて比較した結果,SMRトレーニング群ではその得点が減少し,日常生活場面においても、注意の困難さが減じたことが示唆された。 また、トレーニングに伴う主観的な変化については、協力者の言語報告に対しテキストマイニング法を用いた分析を試みた。その結果,両トレーニング条件においても,言語報告の内容は、「方略」,「コントロール感」,「感想」にかかわる3つのカテゴリに分類された。さらに、トレーニングの経過に応じた変化として、開始当初は,課題を成功させることが"難し"く,"焦り"を感じるといった内容から,課題の制御に成功するようになると,"嬉しい","楽しい"など肯定的な主観的体験が生じ,このことがさらなる"モチベーション"の向上につながるといった変化の生じていることが理解された。 なお,今後の課題として、言語報告の変化に基づき、より適切なトレーニングの教示内容や介入のタイミングを調整すること、効果の乏しい場合などは、周波数帯域成分のフィードバックの方法についても再検討を要する可能性も示唆された。加えて、トレーニング終了後から一定期間後のフォローアップ評価も含めて,NFB法の効果維持の検証も課題と考えられた。
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