研究概要 |
平成22年度は,うつ病休職者の発症・回復・適応過程およびうつ病再発・再燃に関わる諸要因を検討すること,およびうつ病休職者の復職準備や社会機能および職場適応にかかわる認知的、行動的、情緒的要因を明らかにすることを目的として,以下の2つの研究を実施した. 第1の研究としてうつ病よる休職に至るまでの心身の兆候を明らかにするために,うつ病による休職経験者および,その家族.周囲の職員を対象に個別あるいは,集団のヒアリング調査を実施した。その結果,休職経験者は,休職前の兆候に,身体の不調感を挙げている者が多いが,周囲の者は,休職経験者よりも「怒り・イライラ」といった側面を,休職前の変化として捉えていることが分かり,休職経験者とその周囲とで認識の差異があることが分かった。また,さらに職場場面において,認識の差が顕著であることが明らかとなった。 第2の研究として,うつ病休職者の復職に向けた準備に関する諸要因の特徴についての検討を行うために,うつ病により休職中の患者を対象にインタビュー調査を行った.その結果,治療者側は復職準備を大きく分けて3つの段階((1)症状回復を目指す段階,(2)就労を意識した本人および環境の調整を目指す段階,(3)再発予防と適応促進を目指す段階)に分けて準備を進めることが妥当であると考えているが,患者側としては,段階というよりも,"場面"((1)ひとりの場面:体力回復,症状改善,(2)サポートのある場面:認知のゆがみの修正等,(3)職場場面:対人関係の改善)によって取り組めることが違うと考えている可能性が示唆された。また,休職を繰り返した患者は,過去取り組んできたことについて,何をどこまでするかわからなかった,意欲があれば何とかなると思ったなど,情報量が少ない中で過ごし,症状の改善や再発予防に関する取り組みを重要視せぬまま過ごしてしまった可能性が示唆された。
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