研究概要 |
本年度は,東日本大震災の影響を受けて,多くの学会の予定が変更され,研究計画も修正を余儀なくされた。身体表現性解離尺度を用いた調査研究を,大学生対象だけではなく,兵庫医科大学の皮膚科のストレスケア外来にて,ロールシャッハ検査を含めて継続して実施した。また,大学生を対象とした調査研究の結果を,日本健康心理学会と心理臨床学会,日本心理学会において発表した。さらに,青年期アナログ群の解離のロールシャッハ指標について,国際ロールシャッハ及び投映法学会において発表した。 続いて,甲南心理臨床学会のシンポジウム「解離と自己の統合性-トラウマの治療的扱いをめぐって」における講演の逐語録が刊行された。また,『わかりやすいMMPI活用ハンドブック-施行から臨床応用まで-』に潜在的な解離性障害のアセスメント事例について寄稿したものが発行された。 さらに,大学生アナログ群を対象に,解離の主観的体験を示す「気配過敏症状」と珍しい「夢見体験」と解離性体験の頻度の関係について調査した。この研究からはトラウマティック・ストレス学会と心理臨床学会で発表される。 本年度中止になったトラウマティック・ストレス学会で準備していたシンポジウム「外傷性=解離性スペクトラム-心身症性・身体表現性の皮膚症状に焦点を当てて-」の再申込みを行い,採択された。また,虐待タイプと成人愛着スタイル,心身の解離傾向の関連について1件,異なる母集団による同様の研究について1件,ポスター発表の申込みも済ませた。 また,4月から開始された催眠感受性と解離傾向の関係についての実験的研究の準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災による影響と,共同研究者の国内研究が重なったことで,臨床現場におけるデータ収集の予定が大幅に遅れているが,アナログ群におけるデータ収集と学会発表,論文化は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
臨床現場におけるデータ収集を減らして,大学生アナログ群における大規模な調査を実施する。それによって,尺度化を先に進め,その尺度を用いて,臨床群に調査を実施するという順序に変更する。学会発表や,論文化の予定は特に変更なく,分析が終わったものから順次進めていく予定である。 さらに,本年度は催眠感受性と解離傾向の関係についての研究も派生的にスタートしたので,包括的な解離傾向をアセスメントするツールの一つに加えたい。
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