研究課題/領域番号 |
22530771
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研究機関 | 京都学園大学 |
研究代表者 |
伊原 千晶 京都学園大学, 人間文化学部, 准教授 (80288589)
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研究分担者 |
堀 泰祐 滋賀県立成人病センター(研究所), 緩和ケア科, その他 (50507704)
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キーワード | サイコオンコロジー / 乳がん / 臨床心理学 / 国際情報交換 / スピリチュアリティ / ドイツ |
研究概要 |
平成23年度はまず、研究分担者及び滋賀県立成人病センター乳腺外科の担当医師と協議し、本研究のプロトコールを確定した。その過程において、九州がんセンター緩和ケア科の担当医師とも連絡を取り、九州がんセンターにおいても実施可能なプロトコールになるように努めた。 九州がんセンターにおいて、死を直接的に意識させる文言が含まれる質問紙の使用は差し控えるべきだとの指摘を受けたことを踏まえ、予備調査で使用した質問紙とは異なり、うつ・不安・神経症の尺度(SDS・STAI・GHQ)、心の健康度の尺度(WHO SUBI)及び、がんや慢性疾患罹患時の適応度やスピリチュアリティを測定する尺度の乳がん患者版(FACT-B 及びFACIT-Sp)を、「生きることの意義評価票」(Schedule for Meaning in Life Evaluation, SMiLE) と共に実施することに決定した。対象者は滋賀県立成人病センター乳腺外科外来受診中の、30-70歳で術後3年以内の未再発日本人女性乳がん患者とし、データの管理方法・患者への説明方法などを確定した。 このプロトコールを滋賀県立成人病センターの倫理委員会に提出して研究申請し、実施の承認を得た(平成23年11月)。それと並行して九州がんセンターの倫理委員会にも質問紙調査実施を申請し、12月に承認を得た。 平成24年に入ってからは、九州がんセンターにて60例、滋賀県立成人病センターにて6例の質問紙データを得たので、患者群と人口統計学的に適合した対照群についての質問紙調査を実施すべく、社団法人新情報センターに調査の開始を依頼した。患者群に実施した質問紙のうち、がんに直接的に関係した質問項目は省いて、健常群にも適用可能なものを用いて調査し、統計的分析を行うこととした。また、面接調査への協力を承諾してくれた患者に対する調査も開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の申請時には、研究分担者(当時)が所属する愛知医科大学医学部付属病院において、平成22年度に女性乳がん患者を対象とした質問紙調査を開始する予定であった。そのため22年4月より質問紙の選定を実施、研究のプロトコールを確定し、同時に患者への説明文書・同意書などを作成して、愛知医科大学医学部倫理委員会に提出した。 この計画は平成22年度第2回医学部倫理委員会第二臨床試験専門委員会(平成22年6月17日開催)にて審査を受け、説明文書への記載不備を数箇所、訂正するように指示を受けた程度で、質問紙調査・面接調査実施の承認手続きに入る段階となった。 しかし研究分担者の愛知医科大学医学部福富教授から研究代表者に対して、研究成果論文の執筆者代表者を愛知医科大学側に確定するという条件が満たされない限りは研究協力はできない旨の申し出があり、それに伴い、倫理委員会の審査結果も保留となった。同時に、申請時の研究計画の大幅な変更が愛知医科大学側から提案されたため、それを巡っての話し合いが試みられたが、合意に至らず、平成23年2月に研究分担者から削除の申し出があり、研究代表者も受諾した。 こういった経緯の後に、新たな研究組織編成のため、平成23年3月から九州がんセンターおよび滋賀県立成人病センターに研究実施を依頼し、倫理委員会での承認を受けるための研究計画を準備したが、両施設における質問紙調査及び面接調査実施の承認を得られたのが23年11月以降となった結果、患者群に対する質問紙調査の症例数が、当初計画の予定数まで到達しなかった。また2施設のみではデータ量が不足しているため、他施設の倫理委員会にも研究申請中だが、まだ承認されていない。 患者群の人口統計学的特徴が確定しなかったため、健常群のデータ収集も遅れ、24年4月にようやく200例のデータを得たため、データ分析も実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は本研究課題の最終年度でもあり、当初の計画を達成すべく、以下の点を重点的に対応する。 (1)質問紙データの更なる収集。医療機関は多忙であるため、質問紙を患者に依頼する余裕がないことが多いが、説明と依頼をする人を別に付けてでも、十分な症例数が確保されるように努力する。 (2)面接調査の継続。質問紙に回答いただいた患者さんのうちの半数程度は、面接調査への協力を承諾いただいた。個別の事例研究は、質問紙では得られない質的データを提供してくれるため、質問紙のデータ量の不足を補う意味でも、積極的に面接調査を進める。 (3)データ分析。健常群データを分析し、患者群との比較を行う。また患者群については、全体を一括して分析するだけではなく、様々な指標によって下位群を作成し、心理的・実存的課題の実際を詳細に検討する。 (4)介入プログラムの策定。診断および手術・治療の経過の中でのcritical points を見つけ、そこに重点的に介入するプログラムを策定し、可能であれば医療機関においてパイロットスタディを実施する。
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