本研究では説得的コミュニケーションを応用した「健康増進ゲーム」の食生活改善プログラムへの導入の可能性を探り、実践的な健康増進プログラムに利用可能なレベルに完成度を高めることをめざした。 初年度は食に関する持続可能なヘルスプロモーションの世界動向の情報収集を行い、学会誌に総説として投稿した。また、健康増進ゲームを実施した場合と、教材DVDを閲覧した場合で、食生活のバランス、欠食率、果物・野菜の摂取状況、主観的健康度、健康的な食生活に対する態度などに違いが見られるかを検討し、健康増進ゲームに効果が認められることを見出した。 2年目は、食生活の記録方法の検討を行った。自記式の記録と、携帯電話のカメラを用いて撮った食事写真をウェブで送信し、栄養士のフィードバックを得る方法の比較検討を行った。その結果必ずしもウェブの利用がすべてに優れているわけではないことが明らかになり、対象や状況に応じた柔軟な方法の選択が必要であることが示唆された。 最終年は健康的な食生活の実践に及ぼす影響として、自己効力感と不安傾向との関連や生活習慣と健康リスク、および健康セルフエフィカシーとの関連を明らかにした。プログラムの導入にあたり、個人の心理特性に対する配慮の必要性を明らかにした。 これまでの成果をまとめ、「説得的コミュニケーションを利用した『健康増進ゲーム』の開発と効果」と題する論文を発表した。また、説得納得ゲームがどのように健康増進ゲームとして展開され、健康増進プログラムの一環として取り入れ得るか、などがわかるように、これまでの研究成果と資料を含めた「健康増進ゲームの開発・利用・研究ー説得納得ゲームの展開ー」と題する冊子を作成し、公表した。本冊子は説得納得ゲームや健康増進ゲームに関心を持つ研究者のみならず、栄養士、保健師など健康関連の専門家にも配布し、健康増進の現場で役立てて頂く予定である。
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