研究概要 |
敵意(hostility)とは,攻撃性に関連するパーソナリティの1つの側面であり,敵意が認知と態度,怒りが感情の行動として弁別,定義されている。敵意という認知と態度には,他者に害を加えたいと望む傾向や他者に対して怒りを感じる傾向がある。また,敵意には,(1)他者の価値や動機を低く見積もる。(2)他者は大抵の場合悪いことをするものだという予想を抱く。(3)自分を他者と対立する立場に置く見方をする。(4)第三者によって危害を加えられたらよいと望む。という持続している,心的特徴を持っている(山崎,1997)。敵意の高い人は不快な感情を惹起した場面において,敵意の低い人よりも,副交感神経機能が低下傾向にあるため,一定時間経過した後も心臓血管反応の上昇が維持されたままにあることが実験で報告されている。同様のことが日常生活全般においても繰り返されるため,敵意の高い人はCADの発症リスクが高いと考えられる。敵意の高い人のメンタルヘルスを向上するには,彼らがストレスフルな事態に遭遇した時でも自律神経機能をコントロールするためのスキルを学習することが求められる。本申請研究は3つの研究によって構成されている。第I研究では,対人場面においてネガティブな言葉を言われるというストレスフルな事態を操作し,その場面での自律神経系機能の変化を測定する方法論を確立する。第II研究では,ネガティブな言葉を言われるというストレスフルな事態に遭遇した際の敵意の高い人にみられる特有な認知面・行動面を検討する。第III研究では,第II研究の調査結果をもとに介入プログラムを開発し,第I研究で確立した方法論のもとで介入効果を検討する。 H22年度は,第I研究として,対人場面においてネガティブな言葉を言われるというストレスフルな事態を実験場面で操作し,自律神経機能の変化を測定する方法論を確立した。その成果を日本健康心理学会(百々・桾本,2010a),日本心理学会(百々・桾本,2010b)において発表した。
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