敵意とは攻撃性に関連するパーソナリティの1つの側面であり,敵意が認知と態度,怒りが感情の行動として弁別,定義されている。敵意の高い人は不快な感情を惹起した場面において,敵意の低い人よりも,副交感神経機能が低下傾向にあるため,一定時間経過した後も心臓血管反応の上昇が維持されたままにあることが実験で報告されている。同様のことが日常生活全般においても繰り返されるため,敵意の高い人はCADの発症リスクが高いと考えられる。敵意の高い人のメンタルヘルスを向上するには,彼らがストレスフルな事態に遭遇した時でも自律神経機能をコントロールするためのスキルを学習することが求められる。 本申請研究では,対人場面においてネガティブな言葉を言われるというストレスフルな事態を操作し,その場面での自律神経系機能の変化を測定する方法論を確立することを目的に,ポジティブ-ネガティブ感情,喚起感情を惹起させる有用性の高い道具として改訂版感情誘発語視聴覚提示リスト(AAVWL-R)を開発した。AAVWL-Rは快-高覚醒および低覚醒,不快-高覚醒および低覚醒,中程度の快不快度でかつ中程度の覚醒を促す5つのリストから構成されている。さらに,本申請研究では,実験室にてAAVWL-Rのそれぞれのリストを視聴することによる自律神経活動への影響を検討した。その結果,不快-高覚醒リスト視聴による副交感神経活動の顕著な低下,視聴後の交感神経活動の亢進が認められた。さらに,H25年度は,ネガティブな言葉を言われるというストレス場面での,敵意の程度による自律神経活動への影響を検討し,その成果を整理しているところである。
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