1. 研究の目的:近年、日本では20、30歳代の自殺既遂者数が増加している。今回、20、30歳代の自殺予防を目的とし、ストレスコーピングと自殺についての関係を調べた。 2. 研究方法:20、30歳代を中心とした若年層を対象とし、自記式質問紙並びにアンケート調査を行った。自記式質問紙として、ストレスコーピングに関してはCoping Inventory for Stressful Situation(CISS)を、抑うつ感に関してはZung Self-rating Depression Scale(SDS)を、ならびにQuality of Life(QOL)に関してはSF-36を用いた。なお、調査に際し個人情報は収集せず、文章ならびに口頭で本研究の内容と主旨を説明し、同意を得たものからのみ回答を得た。 3. 平成22年度の結果と考察:予備調査として大学生を中心とした157名から回答を得た。そのうち98名(20.7±1.4歳)について解析を行った。その結果、SDS得点とCISS情緒優先対処得点にはかなりの相関が認められた。また、自殺を問題解決の手段として捉える群では、情緒優先対処得点が高い傾向がみられた。また、SDS得点とSF-36による「心の健康」と「活力」で強い負の相関がみられた。自殺を問題解決の手段として捉える群では、SF-36の日常役割機能と社会生活機能の低下がみられた。 これらより、情緒を優先するストレスコーピングは抑うつ状態や自殺の危険因子である可能性が示唆された。また、自殺予防には、日常生活・社会生活上の充実感に着目する必要性も示唆された。これらの結果を基に、今後症例数を増やすとともに、更に詳細な解析をしていく予定である。
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