研究課題/領域番号 |
22530776
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
小野 久江 関西学院大学, 文学部, 教授 (40324925)
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キーワード | 自殺予防 / 若年層 / ストレスコーピング / 抑うつ状態 / QOL |
研究概要 |
1.目的:20、30歳代の自殺とストレスコーピングの関係を調べることにより、若年者の自殺の危険因子・予防因子を見出し、自殺予防への適切な介入方法・治療方法につなげることを目的とした。 2.対象と方法:20、30歳代を中心とする若年層を対象とした。ストレスコーピング測定にはCoping Inventory for Stress fulSituation (CISS)を、抑うつ感測定にはZung Self-rating Depression Scale (SDS)を、Quality of Life (QOL)測定にはSF-36を用いて調査した。また、アンケートを行い自殺関連行動・自殺観についても調査した。なお、調査に際し個人情報は収集せず、文章ならびに口頭で本研究の内容と主旨を説明し、同意を得たものからのみ回答を得た。 3.結果:767名からの回答を得た。今年度は、アンケートから得られた自殺関連行動・自殺観に着目し解析を行った。まず、385名について自殺関連行動・自殺観とCISS得点・SF36得点の関連を解析した結果、自傷行為経験群(14%)は未経験群に比べ課題優先対処得点が低く(p<0.05)、情緒優先対処得点が高く(p<0.05)、回避優先対処得点は低い(p<0.05)ことが示された。自殺念慮有群(16%)および自殺企図有群(6%)ではともに情緒優先対処得点が高く示された(それぞれ、p<0.01、p<0.05)。また、自殺を肯定的にとらえる群ではSF-36の「社会生活機能」が有意に低く示された(p<0.05)。続いて601名を対象とし、自殺観を従属変数、SDS得点・CISS得点を独立変数としてロジスティック回帰分析を行ったところ、自殺を肯定的にとらえることに影響する変数は、男性では情緒優先対処得点(p<0.05)、女性ではSDS得点(p<0.05)となった。 3。考察:自殺関連行動・自殺観からみても、情緒優先対処は若年者の自殺の危険因子である可能性が示された。平成24年度は、約1000名の調査結果に対して詳細な解析をする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査協力者も順調に得られ、また解析も順調に進んでいる。本研究から多くの副次的研究結果が見いだされるとともに、付随的に自殺・抑うつ状態関連の研究成果も同時にあがっており、研究全体としてはおおむね順調に進展していると考える。しかし、対象者として私企業に勤務する20、30歳代の協力を得るのが困難な状況がある。また、国内外の学会発表との兼ね合いから、論文投稿が予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、以下の通りである。 (1)関係各機関(商工会議所・企業等)への協力依頼をより積極的に行っていき、私企業に勤務する20、30歳代の協力者を増やす。 (2)統計専門家の協力を得て、データの解析をさらに進める。 (3)国内外の学会発表で研究結果を公表する。 (4)国内外の学術雑誌への投稿を行う。 (5)研究内容又は研究成果を、一般向け講演会やホームページで公開し自殺予防啓発教育に役立てる。
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